『穴熊社長の、蛙鳴蝉噪(あめいせんそう) 2014年2月号』

 たまたま観ていた「食」がテーマのドラマの子役の言葉にハッとしました。
お母さんが作ってくれる食事が毎日おいしいから、おいしいとまずいの区別が分からないという台詞です。以前、10代の少女が「お腹が空いたという感覚が分からない」と言った言葉も思い出しました。おいしい食物が身のまわりに溢れ、それが当たり前で、おいしく食べる事が出来る事ありがたさを感じる事ができにくい世の中になっているのかもしれません。厳しい混迷の時代だといいつつ、食べる事に関しては、日本は困ってませんね。
 毎年、日本人の主食とされる米の消費量が減り、減反政策が実施される。一方で、世界的な食糧不足が懸念され、飢えに苦しむ人たちを尻目に、買いあさられた穀物を家畜に与える。その肉や牛乳、乳製品が、ふんだんに安価に市場に出廻り、賞味期限が切れればあっさりと廃棄される。はたまた、食品表示偽装で問題となった、高級ホテルで食事をし、その違いに気づいた人はどれだけいたのかと余計な心配まで…。おいしいとか、もったいないとか、ありがたいとかという意味すら子供達に伝えるのが難しくなってきた気がします。果たして日本という国は、本当に豊かな国なのでしょうか?
 冬は寒いのが当たり前。にもかかわらず、寒くなると「寒い寒い」と文句が出ます。夏は暑いのが当たり前。でも、やっぱり暑くなると「暑い暑い」と不満が出ます。言ったからといって、寒さや暑さは変わらないんですけどね。 寒い冬には、温かいお鍋を囲むのは幸せを感じますよね。消防出初式での行進も、身が引締まり、気持ちも凛としていいものですよね。雪があるからこそ味わえる露天風呂温泉も格別ですね。駅のホームで鼻水たらしながら食べる立ち食いそばのおいしさは、いかがでしょうか。夏の暑い盛りに、汗をかいての一仕事。その後の、たった一杯の冷たい麦茶の沁みること。
これを命の水というのでしょうか。寒い時だからこそ味わえる温かさ。暑い時だからこそ味わえる爽快感。当たり前と思える中にこそ、幸せのひとコマを見出していく。
一見当たり前と思いがちな日常に感謝できる自分を創っていく。そんなところに心の豊かさの鍵があるのかもしれません。「豊かな暮らしをお届けする」。今月も、お元気様です!!
(14・1・12)
株 式 会 社 エ マ 商 会    依 馬  邦 夫