『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2023年10月号』

 一を以って之を貫く(いちをもってこれをつらぬく)。論語に出てくる言葉ですが、一つのもの(仁:思いやり・誠実さ)で万事を貫くこと。仁をもってあらゆる事に対処していこうという孔子の言葉です。こうありたいと思ってはみても、凡人には到底できることではありません。

 今夏、久しぶりに中学校の同級生の一人、K君に会いました。彼は、名古屋の私立大学の職員で、バスケット部の監督を務めています。在職する大学及び関連する高校生の夏合宿に学生を引き連れて木曽にやってきました。コロナの間はお休みしていましたが、感染が落ち着きを取り戻し再開。地元の中学校の体育館を使用し、また、宿泊は地元の宿泊施設に泊まり、総勢100名を超す団体です。停滞していた地域の観光も徐々に復活したところではありますが、地域にとってはありがたい来訪客と言えるでしょう。これからも継続して頂ける事を願います。

 地域の人口減少による様々な課題もあり、少子化対策と共に、移住者の定住促進等が求めれています。中京エリアの若者も、こうした合宿を通して木曽地域に関心も持ってくれたり、愛着が芽生えてくれたり…そこから少しでも可能性が高まればと、妄想と言える希望を抱いたりします。同級生の彼は、既にご両親も他界し、将来、地元に戻ることはないと思われますが、それでも郷土に少しでも貢献ができればという思いを感じます。地元を離れても、そんな気持ちを持つ、地元出身者が、カタチや方法はいろいろあっても、多種多様なつながりによって、人の輪が広がることを願いたいものです。

 K君とは、小学校の頃はクラスは違えど、草野球の仲間でした。中学に入り同じクラスで、部活も同じバスケット部。体も一回り大きく、運動神経も抜群。指導する先生の期待も大きいものでした。ところが、元々、お父様が営林署にお勤めで、途中から、隣町に引っ越し。つまり、「昨日の友は、今日の敵」のように、ライバルの中学校へ転校となりました。その後、地元の高校に進学しバスケットも継続。大学は一般入試で進学。スポーツ推薦ではなく、大学でもバスケットを自力で入部し、続けました。在学中の活躍が評価され、大学の職員として抜擢。今も監督として活躍しているという訳です。まさに「一を以って之を貫く」と言って良いでしょう。人柄も推して知るべし。都会に住んでいても、郷土への思い、また、私のような者にもいまだ友人としてお付き合いをしてくれています。

 「朋遠方より来る有り また楽しからずや」(論語・孔子)。異なる道を歩んでいても、心が通じ合う友人は、人生は豊かにしてくれますね。
 今月も、お元気様です。(23・8・29)