『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2023年8月号』

「日本銀行」。日本銀行法では、日本銀行の目的を、「我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うこと」及び「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資すること」を揚げています。また、日本銀行が通貨及び金融の調節を行うに当たっての理念として、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を揚げています(日本銀行のホームページから引用)。

通貨を発行できるのは「日本銀行」だけでありそれが国内唯一の「中央銀行」であり、一般の「市中銀行」とは区別されます。私たちの多くが利用するのは地方銀行である○○銀行といった金融機関ですね。市中銀行の主な役割は、預金を預かり利息を預金者に支払い、預かった預金を融資を必要とする人に貸して利息を受け取る。利息の差額が銀行の利益となって銀行の経営が成り立っています。但し、ご存じのように金利が低い時代が続き、銀行の経営も厳しく、振込手数料や投資信託、保険販売等の手数料による収益確保をしています。貸出金利は各銀行が決めていますが、金融市場、競争状況、日本銀行の政策的な金利に影響されます。日本銀行は市中銀行に資金の貸出、預入を受けているので、「銀行の銀行」であると言えます。

「物価が高騰」しています。日本銀行の理念に「物価の安定」とありますが、今の物価の高騰を金融政策によって対応できるのか。日本の物価高騰は、エネルギーを始め、資源の高騰による消費価格への転嫁が大きな理由です。米国の物価の高騰は、好景気が続き、経済成長により景気が過熱したのが主な理由であり、そうした物価高への金融政策は有効でも、日本の物価高とは性質が異なるようです。米国の利上げは、その物価高を抑制する為の金融政策であり、相応の効果があるように評価されています。金利が上がると、モノ(商品)と比べ、お金の価値が相対的に高まるというので物価の抑制につながるという理論による金融政策です。そうした意味で、日本の物価高対策として利上げをしていないのは理にかなった政策判断といえそうです。

この4月に日銀総裁が10年ぶり交代しました。2代前の日銀総裁の講演会に、この6月に聴講する機会に恵まれました。元日銀総裁が次の総裁を評価することは控えざるを得ず、事実の検証という視点でのお話だったかと思います。「デフレ脱却」を掲げた「アベノミクス」における日銀の金融政策は有効であったか。「効果」はあったけれど「成果」があったか定かではない。デフレ対策、経済対策は、「経済」、「金融システム」よりも、大企業から中小零細企業まで含めた、「経営」の力による課題解決が必要という結論に、私は聞こえました。
今月も、お元気様です。(23・6・29)