『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2022年2月号』

2008年(平成20年)以来の、原油価格の高騰により、お客様にはご負担をお掛けしております。この前の秋から、石油製品のみならず、食料品等の日用品も値上げが続きます。原因のひとつとしては、「需給ギャップ」が指摘されています。市場経済のメカニズム(仕組)として、モノの需要が高まり、モノの供給が不足すると、価格が上昇します。これが逆になると価格が下がる。我々の日常生活ではピンときませんが、市場経済の原理とされます。
コロナの終息はまだ見えてきませんが、コロナのパンデミックス(世界的大流行)により、急速に世界経済が縮小しました。それが、世界的に、徐々に復調してきた。アフターコロナ(コロナが終息した後)を見越し、人出が増えてきた。今まで、巣篭りしていた人たちが、外に出て経済活動をするようになってきた。モノの需要が急速に増えたものの、モノの供給が間に合わない。生産の水準を落とした工場が、操業度が上がらない。物流も追いつかない。米国でも、コロナ禍によって減らした物流の従業者が戻らず停滞し、クリスマス商戦に打撃を与えた。
同様に、コロナ禍で需要が落ち込んだ原油の生産が戻らない。2010年代にシェールガスの供給が、米国を中心に供給できるようになり、中東の産油国の依存度が低下し、比較的、安定した流れがありました。今回は、需要回復によって、供給が不足している。これにより、原油価格が高騰。工業製品に関しては、中国の工場に依存しているところがあります。中国にあっては、化石エネルギー資源は、自国で賄う事ができず、計画停電も実施。それにより、モノの供給が不足し、石油製品以外の価格高騰ににも影響している。食糧の面では、気候変動により世界的に自然災害により農作物、水産物の供給の影響もある模様。
石油製品に関しては、それに加えて、「脱・炭素社会」の世界的な潮流の影響も。中東の産油国は、原油の輸出のみで経済が成り立っているところがあり、「脱炭素」となってしまえば、産油国は経済危機に晒される。その時代が来る前に、自国の存在感を高める為、意図的に、原油の生産を絞る。政治的な思惑が背景にあるとされます。不安を煽る訳ではありませんが、昭和の時代のオイルショックの再来を懸念する識者もあります。
民間人が宇宙飛行する時代になっても、環境問題、エネルギー問題、食糧問題等…人類の共通課題を協調して解決するに至らず、自国都合、自分都合が優先される。「人間の幸せには自由は大切だが、社会秩序は必要」。パナソニック創業者、松下赤経塾創設者の松下幸之助翁の、昭和23年の言葉です。世界の政治家も、経営者も、この当たり前とも思える言葉の意味を考えて、事に当たらねばなりません。
今月も、お元気様です。(21・12・30)