「式年遷宮(しきねんせんぐう)」とは、日本の伝統的な宗教的儀式のひとつで、神社の本殿や関連施設を定期的に新しい場所へ建て替え、神々を新しい建物に遷(うつ)す行事を指します。神宮(伊勢神宮)では、20年に1度の周期で行われ続けています。一連の行事のひとつに、御杣始祭(みそまはじめさい)が、令和7年の今年6月3日に木曽の深山において開催されます。御杣始祭は、御桶代(みひしろぎ)、即ち御神体をお納めする器に供すご神木を切り出す行事です。ご神木は、「三つ紐切伐り」という作法により切り出されます。式典では、内宮、外宮の順に1本ずつ伐採され、2本が交差するように倒す(寝かす)のが習わしとされます。神宮にあって、内宮を「皇大神宮」と称し、主祭神は「天照大御神(あまてらすおおみかみ」。外宮は、「豊受大神宮」と称し、豊受大御神(とようけのおおみかみ)が主祭神とされます。天照大御神は神話上の存在とされる面もありますが、初代天皇の、「神武天皇」の祖神(祖先の意味合い)とされ、天皇家のご先祖と解釈されます。
前回の御杣始祭は、平成17年(2005年)に木曽で開催され、20年が経ちました。式年遷宮の行事のひとつであり、自ずと御杣始祭も20年周期になります。開催日については、基本的に「6月3日」の固定とされ、前回の折には、その日には「雨が降った事がない」と、有識者からお聞きしました。
式年遷宮は、飛鳥時代の天武天皇が定め、第1回は持統天皇により西暦690年に開催されたと記録されています。その後、戦国時代に中断されたりした事はあっても、現代まで脈々と受け継がれています。式年遷宮には、「常若(とこわか)」の思想があると言われます。日本の伝統や文化において用いられる言葉で、「永遠に若々しい」や「常に新しく生まれ変わる」といった意味を持っています。この概念は、自然や生命の再生、永続性、循環を象徴しています。古い建物を壊し新しい社殿を建てることで、神様の住まいを常に新しい状態に保ち、それにより、精神文化・伝統技術を継承し、「古きを捨てずに新しきを取り入れる」という伝統の維持と再生の象徴となっています。
令和の昨今。憲法改正、天皇制の議論がされますが、日本の天皇制は、人類史上稀にみる歴史と文化であり、伊勢神宮は日本人の心のふるさとと言って過言ではないでしょう。日本の歴史や文化の継承に、私たちの故郷・地元で関わる事ができる喜びを実感しながら、関係各位のご尽力に感謝しつつ成功裏に営まれますことを祈念します。
今月も、お元気様です。(25・3・28)
『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2025年5月号』
2025-05-01