『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2023年6月号』

「そんな夢みたいな…」。先月号の小欄のテーマにした「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」。まさに夢の舞台に立った選手たち。子どもの頃には、プロ野球選手になる事を口にし、夢をみることは良いけれど、「そんなのムリ」と周囲に言われた事が必ずあるようです。あのイチロー選手も、何度も言われたそうです。けれど、あきらめなかった。そうは言っても、あきらめずにやり続ければ、誰しもなれると断言できないところに、凡人の自分がいますね。

日本プロ野球の球団のオーナーでもあるソフトバンクの孫正義氏。一代で巨大企業を築いた経営者。ご本人が若い頃、「いつかは、豆腐を数えるようにお金を1丁(兆)、2丁(兆)と数えるような会社にする」と大言壮語を吐き、今となっては実現しています。このレベルの方々も、志を高く、あきらずに努力する事の大切さを説きますが、それと共に、異口同音に口にするのが、「運の良さ」。所謂、世間で言われる「成功者」と言われる人たちは、苦労の大きさよりも、「自分は運が良かった」と仰る事が多いように感じます。

一代で、年商2兆円規模の会社を築いた日本電産の創業者の永守重信氏(78歳)。年頭に、「運をつかむ」という著書を出版。氏は、「人生は運が7割」と断言しています。ただし、運は努力によって高まるという事を説きます。意外と凡人は、運は持って生まれたもの。変える事はできないと考えがち。けれど、運は変えられると、氏は語ります。「寝る時の方角」、「ラッキーカラーを常に身につける」といった、迷信じゃないの…と思うような記述もありますが、その多くは、ごく当たり前とか、誰もが良い習慣と思えるような内容が多いかと思われます。ご興味のある方は、ご一読ください。

「経営の神様」と称賛された、昭和の経営者・松下幸之助翁(パナソニック創業者)。この方にも「運」に関する逸話が残っています。政治家を育てる為に設立した「松下政経塾」。設立当時に、学歴・経歴のある人ばかりが集まる中、入塾の選抜の条件に翁が示した基準が、「運の強い人」と「愛嬌のある人」。運の強さを何で測るか。結局は、一見、人が不運と思うような事を、バネにして、前向きに捉え、行動を興した事により好転させる力を、「運の強さ」と考えたと、松下関係者が後述しています。翁の最期は病院。気管支肺炎を発症し、からんだ痰を医師が、「これから管を喉に入れます。苦しいでしょうがご辛抱ください」と言うと、「いやいや、お願いするのは私です」と返したのが絶命の言葉という記録があります。「運」、「愛嬌」は、人への気遣い、感謝もその根源にあるのかも知れません。今日は、翁の命日。

今月も、お元気様です。(23・4・27)