『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2023年2月号』

「仕事を通して成長する」。小職が、この言葉に出会い、感銘を受けたのは、2001年。日経ビジネス新年号の巻頭言に、故稲盛和夫氏の言葉として掲載されていました。「働かざる者、食うべからず」。生活の糧の為には、誰しも仕事をしていかねばなりませんが、食べていくためだけに仕事をするのか。1日24時間。1年365日。その内の多くの時間を仕事に費やす事になる。人生の中に仕事があるのではなく、仕事の中に人生がある。仕事に志や夢をもって取り組めば、次から次へと色々な壁が立ちはだかる。思うようにいかない事や理不尽なことばかりが続く。それでも、ひとつひとつを真摯に誠実に向き合って乗り越えていく。その過程に、達成感、充実感、喜びも得られていく。それと共に、仕事を通して自分自身の成長を気づき、実感し、人生の豊かさ、妙味を知る事になる。そんな考え方の下に大事にしてきた言葉ではありますが、近年の「働き方改革」の名の下に、人前で口にするのが憚るようなご時世になってきたように思い、実際に、口にすることも控えるようになりました。

稲盛和夫氏と言えば、一代で京セラを年商2兆円、従業者8万人規模の会社にした創業者。昭和54年の通信事業の自由化に伴いKDDIというNTTに対抗する通信会社を設立。今、auの携帯電話をお使いの方も多いでしょう。更に、一時、破綻した日本航空の再生の為に会長に無報酬で就任し、全く、未経験の航空業界でありながら再上場を果たした。昭和から平成にかけての歴史に残る日本のカリスマ経営者。昨年、令和4年8月に、老衰により90年の生涯を閉じました。世界各国から大企業、中小企業を問わず多くの人たちが栄誉を称えると共に惜しまれ旅立たれました。

20年来購読する月刊誌の86歳時稲盛氏のインタビューの一部の引用。「人生の大事」とは…。「一つは、どんな環境にいても真面目に一所懸命生きる事。自分が自分を一つだけ褒めるとすれば、どんな逆境にあろうとも不平不満を言わず、慢心せず、今目の前に与えられた仕事に、それがどんな些細な仕事でも、全身全霊で打ち込み努力してきた事。もう一つは、利他の心。皆を幸せにしてあげたいと強く意識し、生きる事」、「自分がそうであったように、“仕事に打ち込んで、世の中に役に立ち、自分自身も幸せだった“と感じる生き方が、時代がどう変わろうと、最終的にはみんなが求めているものではないかと思います。」(引用)

小職が小紙に、故稲盛和夫翁について掲載し、言葉を引用する事自体、非常におこがましいところはありますが、新年を迎え、今一度、志事について考え、正しい事を考えるお正月にしたいと思います。
今年も、お元気様です。(22・12・27)