2019年1月号となりました。本年もよろしくお願い申し上げます。
毎年実施される内閣府の世論調査の設問、「将来に備えて貯蓄・投資を重視するか?」、「毎日に、充実した生活を重視するか?」に対し、最新結果(平成30年6月)は、「前者が60%、後者が32%」という結果だったそうです。前者が多数派を占めるようになったのは、1980年代のバブル期のはしり。バブル崩壊後もその傾向は続き、現在に至るようです。
従来の、伝統的日本人の感覚からすれば、「先憂後楽(せんゆうこうらく)」。「質素倹約を旨とす」。元来、自然災害と向き合って暮らす日本人は、「この秋は雨か秋は知らねども、今日のつとめに田草取るなり」(二宮尊徳)と不測の事態に対して堅実な姿勢があったと思われます。近代に入り、資源をめぐって戦争があったり、人口の増加によるモノへの需要が高まり、資本主義経済の下、貯蓄や投資は、金融機関を通して、社会全体へと再投資され、それが経済成長を生んだ。
こうした経済モデルの根底には、経済学者のケインズのモデルがありました。しかし、新資本主義の台頭、アベノミクス下にあっては、金融政策が優先され、その思考も影を潜める時代となりました。ケインズは1930年代に、100年後の2030年には、「労働による対価を得ることより、労働以外の時間(ケインズは、レジャー・娯楽と表現)にテーマが移る」と予言しました。まさに、世論調査の結果は、後者の価値観に変わってきた証左であると言えます。
「物資的豊かさから、心の豊かさへ。」そう日本人が価値観の転換をしてきた平成も最後の歳を迎えます。国の経済規模を表すGDP(国内総生産)。昭和の高度経済成長時代に世界2位に躍り出て以来42年間続きましたが、数年前に中国が取って代わりました。しかしながら、為替レートを勘案すれば、世界2位の水準は依然として維持されていると解釈されています。経済的に豊かな国で、かつ、将来に備えて貯蓄するより、目の前の充実した生活を重視したいならば、消費活動におカネを投じるかと言えば、消費は徐々に力強くなっている経済統計はありますが、底型さはなく、世の中全体では、好景気のはずが、実感できない国民が多いという構図になっています。やはり年金、医療といった社会保障の信頼性が揺らぎ、かつ人口減少への不安が、気持ちはあっても実際の消費行動に直結しないのでしょう。
2020年には、2回目の東京五輪。そして、2回目の大阪万博も決定しました。私にとっては、初めての東京五輪。当時、万博は日本人の半分が来場とか。大阪行きのバスに乗った姉・兄を羨ましく送った記憶があります。2019年に向け、国内外の経済見通しは、専門家によれば、総じて明るい。物心共に豊かさを実現できる歳にしていきたいと思います。
今年も、お元気様です。(18・12・7)
株 式 会 社 エ マ 商 会 依 馬 邦 夫
『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2019年1月号』
2019-01-01