「うまい、安い、早い」と聞けば、何を連想しますか。最近は、あまり耳にしなくなった気がしますが、「吉野家の牛丼」と、私は答えます。皆さんはいかがでしょうか。
日本の消費者の多くの価値観からすると、「うまい、安い、早い」、「安くて、いいもの」は、歓迎すべきものと感じますね。
「経営の神様」と称賛された「パナソニック」の創業者である「松下幸之助翁」は、「水道哲学」を唱えました。物価を低廉にして、広く社会に行き渡る良質な消費を大量供給する事を産業人の使命のひとつに掲げました。これも最近耳にしませんが、日本にあって「水と安全はタダ」と言われた事があります。水資源が豊富な国であり、世界的にみても比較的安全な社会とされました。水道も蛇口をひねれば枯渇の心配なく、清潔な水が確保できる日本社会。それと同様に社会に必要される商品を無代に近い状態で提供する事を是とする。時代背景としては、「貧しさの克服」が産業人としての命題であり、昭和から平成にかけて、世界に冠たる経済大国につながる財界リーダーとしての哲学だったかと推測します。
今年の1月30日の岸田首相は施政方針演説で、「2024年は物価を上回る所得」を実現すると公約しました。平成以降、デフレ時代が続きました。モノやサービスの価格が継続的に下がり、企業収益の悪化、所得の減少、資産価値の下落と経済が停滞し、国際社会にあっても経済的地位が低下しました。デフレ脱却を掲げ、安部元総理が「アベノミクス」と称して、経済対策を実行。その成果も確認できないまま他界。そのバトンを引き継ぐ自民党総裁である、時の総理の公約です。
働く現役世代の賃金を持続的に上げていきましょう。その為の前提として、物価を上げて、その原資となる企業の収益力を高めましょうというのが、政府の方針という事です。小職も経営者の端くれとして、毎年給料が上がる会社でありたいと思い、多い・少ないは、あったとしても昇給を実施。その前提としては、会社の業績が毎年向上し、成長していく事が必要です。しかしながら弊社が身を置く地域は、人口減少、高齢化に歯止めのかからず、厳しい現実があります。
物価が上昇すれば、消費税の税収は増えるでしょう。賃金が上がれば、所得が増えて所得税も増えるでしょう。企業の利益が増えれば、法人税も増えるでしょう。少子高齢化が進む日本社会にあって、国の社会保障費(年金、医療費、介護費等)は大きく膨れ上がり、また減る兆しのない国の借金を賄う財源の確保も必要です。
従来の価値観を変えていかなければならない1年になりそうです。
今月も、お元気様です。(24・1・31)
『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2024年3月号』
2024-03-01