今年の「基準地価」が発表されました(2・9・29)。公的機関が公表する不動産価格の指標のひとつで、毎年9月下旬に、各都道府県から、7月1日時点での、1㎡当たりの評価額が報じられます。実勢価格とは異なり、基準地(各都道府県が選定)の更地が前提です。公表の目的は、適正な地価の形成に役立てる事です。同様に、「公示価格」が国土交通省から、毎年3月下旬に、1月1日を基準日として公表されます。国が調べた都市の土地価格の目安と、都道府県が調べた地域の土地価格の目安を勘案して、指標のひとつとして利用し、適正な価格形成に役立てる事が期待されます。実際の売買金額は当事者の同意によって決まるので、あくまで参考指標として実際は取引されます。
下落率全国2位となったのが、長野市の豊野地区。昨年の台風19号で大きな被害に遭ったところです。未だ、災害の傷の癒えないところに、こうした新聞報道がされる。そこに住む方々の心中を思うと複雑な心境です。確かに、災害が影響して評価額が下がるのは理屈としては理解できても住民にとっては、自分達の力の及ばない自然災害の結果。行政等の災害対策や治水対策に頼るしかありません。
上昇率全国4位は、白馬村の別荘地。コロナ禍によるインバウンド(海外誘客)の激減にもかかわらず、外国人の富裕層の不動産購入が根強いのが理由との事。山岳景観や良質な雪に魅了されて2006年頃から地価が上がってきたと地元不動産業者の弁。反面、好立地は村の一部のみで、実感がないという地元関係者も少なくない。人口減少時代にあって、地方への流入人口や移住は関心の高い課題。けれど、別荘地は、通年の滞在というより季節の偏りもあり、また、移住についても、移住者と既住者とのトラブルも散見されるようです。特に、コロナ時代にあっては、地元は往来者に対して、プラスとマイナスとのバランスに苦慮していますね。
コロナの影響で、大都市から地方への移住地として、長野県の人気が高いというデータもあります。県下の自治体にあっては、これをチャンスにと積極的に活用しようという動きもあります。勿論、にわか仕立てに動いて、何とかなるものでもなく、政策の積み重ねが必要ですね。平成の大合併から十余年。人口減少と共に、国の借金が増え続けるのに対し、行政の効率化と共に、自治体間のフェアな競争原理により、より良い国民の暮らしの向上を目指した。官民一体となって努力した地域にあっては大きなチャンスの可能性があるかもしれません。
「自助」が最優先だとしても、「自助・共助・公助」のバランスが、コロナ時代にあっても肝要かと思います。
今月も、お元気様です。(2・9・30)
『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2020年11月号』
2020-11-01