2度目の大阪都構想が否決されました。旗手役だった大阪維新の会の松井大阪市長も任期満了をもって政界引退の表明。僅差の結果でも、多数決の原理で、多い方の意見が勝ち。一定の数はあっても、賛成を唱えた人も、ノーサイド(結果が出れば、勝ち負けの区別はない)。受け入れて、同じ体制で続けることになります。
大阪都構想は、大阪市と大阪府が手掛けてきた都市開発などの広域行政を府に一本化し、市と府の財政を合わせる。限られた財源を府主体で効率的に使うのが狙いとされました。所謂、二重行政の非効率を解消する事が目的のひとつ。背景には、人口減や高齢化が進む小規模自治体を含め、府全体に目配りした成長戦略を描いた視点もありました。近代国家にあって成熟社会とされる日本の課題である人口減と高齢化。賛否の結果は別としても、その先を民意が思い描く事の難しさを感じます。東京都(1,398万人)、神奈川県(921万人)に次ぐ人口を有する都道府県の大阪府(882万人)といった大都市圏での結果であっても、地方自治のあり方については、他人事ではないかと思います。
木曽にあっても、広域行政は、一定の規模があれば自治体の運営となる消防署やゴミ処理は、町村の連合体がしていますね。小規模自治体では賄いきれない、協力した方が効率的になるという理由かと思われますが、歯止めのかからない当地の人口減少の課題には、従来の延長線上にない新たな発想や仕組みが必要な分野も増えてきているかと思います。従来からのシビアな課題が、コロナ禍にあって、優先順位が変わり、その間にも確実に時間が流れている訳で、ズルズルと先送りになりかねない懸念もあります。
民主主義が衰えている。2020年に民主国家に暮らす人は、世界人口の46%と、旧ソ連が崩壊した1991年以来の低水準と言われます。約30年前に、旧ソ連との冷戦に勝利した米国は自国第一主義に傾き、自由と民主主義の旗手の座を降りた。その国の大統領を決める選挙が明日に迫っています。これも、事前調査からすると拮抗している模様。小紙が周知の目に触れる頃は雌雄を決していますが、多数決に従っているはず。ノーサイドがルールとは言うもののアメリカの「分断社会」への影響は、中国との覇権争いが増す中、平和と秩序の世界基準も問うことにもつながりますね。
ある地方議会のこども向け広報に、「民主主義とは、話し合って決めること」とありました。勝った負けたを決めるのではなく、お互いにとって幸せであることを話し合って決めるのは、国家であろうが、日常の人間関係であろうが、基本のキの字なのかもしれませんね。
今月も、お元気様です。(2・11・2)
『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2020年12月号』
2020-12-01