「本当なら明日の今頃…」と、幻の東京2020五輪の開会式前夜の東京・国立競技場。競泳の「池江 瑠花子さん」の朗読メッセージをお聞きになった方もおられるでしょう。コロナによる延期の前に、東京五輪に向けて大きな期待を背負いながら、突然の白血病の発病により東京五輪を断念した彼女。この日の映像は、悲壮感よりも透明感が上回り、自分の娘と同世代の若者に勇気づけらる姿でした。
出場を目指してきた、出場が確定していたアスリートたち。物心ついた頃から、全てをその競技にかけてきた。もちろん本人のみならず、家族やその指導者たちも。そこまで来るのに誰一人欠けても辿り着けなかった。それを目前に、全く別世界に。人と会う事。外を歩くことすら、当たり前でない。
誰もがコロナ終息を願うところであり、こういう時だからこそ人類が結束して解決に努める正念場と思いきや、米中の経済戦争、覇権争い。両国の総領事館の閉鎖は、大国同士の断絶ともいえる事態に。五輪は、スポーツ、平和の祭典の位置づけも。国家間のスポーツを通した競争とも言えますが、統一されたルールによって勝敗が決まったり、記録が更新される。アスリートのひたむきな努力や人間の限界にチャレンジする姿は、国家間の争いを超えた感動や喜びによって世界がつながる。過去には政治的な争いが原因でボイコットにより五輪の夢を失われた事もありました。4年に1度の世界の祭典は、平和への貢献といった点にも価値のあることでしょう。
世界レベルのスポーツとまでいかなくとも、アマチュアスポーツにあっても中高生の部活でも心が痛みますね。高校野球も春の選抜に続き、夏の甲子園も中止。代替えの県単位の大会が開催されたりフォローアップはされている種目はあるものの、多くの若者は喪失感を味わっています。学校にあっても、小・中・高校は再開されているものの、大学の多くはオンライン授業。第2波の懸念から更に秋以降の延長も。大学全入時代とはいうものの、夢や志をもって難関と言われる受験を突破。中には浪人生活を超えて手に入れた合格も。その後、1度も通学できない学生たち。「Go To トラベル」…「気をつければ旅行は行っても良いのに、どうして大学は学費の免除もないのに行っちゃいけないの?」という学生の質問に何と答えたら良いのでしょうか。近年、日本の教育や先端科学の国際的遅れが懸念されていますが、こんなところにもコロナは日本社会が抱える課題を白日の下にさらしているのでしょうか。
「逆境から這い上がっていく時には、希望の力が必要」。さあ、大人も頑張ろう。
今月も、雨にも負けずに、お元気様です。(20・7・27)
『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2020年9月号』
2020-09-01