「この秋は 雨か風かは 知らねども 今日のつとめに 田草とるなり」(二宮尊徳翁)。以前にも小欄に引用した歌です。この秋の台風の被害の映像や長野県のりんご農家さんのコメントを聞きながら、ふと思い出します。
スーパー台風と言われる大型台風が続けて上陸。その中で、当地、木曽にあっては、権兵衛トンネルの不通はあるものの、大きな被害がなかったのは奇跡とも思えます。結果、「何もなくて良かった」とは、到底思えるものではありません。「想定外」の言葉が当たり前になって、自らが住む場所の被害を予想しようという呼びかけも、「そうだな」とは思ってみても、「じゃあ」と、どう考えみても、定まる答えは見つかりません。
冒頭の尊徳翁の言葉からすれば、災害の程度はあっても、日本に住む以上、自然災害と向き合い、自然に対する畏敬の念をもって命をつないできたのが、島国・日本の歴史であるとも言えるのかもしれません。
被災後、浸水した家財、日用品などが「災害ごみ」となり、山積みにされた光景。一軒一軒に必要な家具や日用品を、日々働く事によって整えて、少しづつ便利で快適な暮らしができるようになった。それが、一晩にして失われた。呆然自失、明日からの暮らしの見通しも立たないまま、とにかく使えなくなった物を、ひたすら片づける。泥を掻き出す。その身になった時に、すぐに、自分は、そんな行動ができるのだろうか。
今日は、沖縄の首里城焼失のニュースが入ってきました。原因究明はこれからですが、人災の範疇でしょう。沖縄の歴史と文化のシンボルとされ、沖縄県民の心の拠り所とも言え、人命被害はなかった模様ですが、多くの人が心を痛めています。四百年にわたる琉球王国の政治、文化、外交の中心地。太平洋戦争の沖縄戦を含む4度の焼失から立ち直り、今年の1月に30年の歳月をかけて復元されたばかりとの事。居た堪れませんね。
これを受けて、即日、京都の二条城では、緊急に防災会議がもたれ点検が開始されたというニュースがありました。対岸の火事、他人事にしない、この対応に感服します。世界遺産でもあり、日本の古都を守る気概を感じます。被災者、被災地を思い、誰でも、何かできる事と思ってもなかなかできない。実際に行動できる人は限られているでしょう。そういう意味で、目の前の、すぐにできる事、すぐにやる。日々の、当たり前に思う日常のひとつひとつを大切にする。まずは、それが大事と思い至ります。今年も、良い感謝デーになるようベストを尽くします。
今月も、お元気様です。(19・10・31)
『穴熊社長の蛙鳴蝉噪(あめいせんそう)2019年12月号』
2019-12-01